分かっていた。
だからこそ、嫌になって。

私の心が。
あなたに夢中になっていたから。


恋だったんです。

あなたのことが‥


好きです。


ずっと伝えられない。
あなたに。

この気持ち。

黒猫

あの日は、とても暑くて。
あなたが私に初めて話かけてくれた。


「あ、あれ‥」
私はその時、一緒にいた猫がいなくなって探していた。
広い草原の中、ただただ見回して探すばかり。

「どこ‥行ったんだろ‥」
なんて、言っていたら後ろから声がした。


これが、あなたとの出会いでした。


「ねぇ、これキミの猫さん?」
「え‥?」

ふと、声のする方向に顔を向けると、男の人が立っていた。
黒い猫耳と、黒いシッポが、私の猫とソックリで。
一瞬、私の猫なのかと思ってしまったくらいだった。


「あれ‥?この猫さん違った‥?」
「あ!いえ、私の猫です!」

見とれていた。
なんて口が裂けても言えなかった。


「猫さん可愛いね、すぐ僕の方来たんだよ」
「あ‥ごめんなさい‥ありがとうございます‥」
「や!そんな謝らなくていいのに?!」
「でも‥ご迷惑かけて‥」
「そんなことないよー‥?だって嬉しいもん!」
「うれしい‥?」


「だってキミにも会えたから」


あなたは笑顔でそう言ってくれた。
私は顔を真っ赤にした。


あなたの顔が眩しくて。
可愛くて。


心臓がドキドキしていた。



「あれ?顔真っ赤だよ‥?」
あなたはそう言って私の目の前に顔をやる。

顔が近付く。
あなたの綺麗な顔が近付く。


体がおかしくなった。
ドキドキが止まらなくて。


「だ、大丈夫だから‥平気‥」
そう言って私はあなたから離れた。

まだ、鼓動は早くて。


「そうー?それならいいんだけど‥」
「ごめんなさい‥」
「あわわ、謝らないでよー」

私が落ち込むと、あなたは慌てた。

だって、ドキドキが止まらないの。
あなたが、ここにいる。

心の奥で、何かが動いていた。




「むつきー‥」





遠くで誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえた。



「わ!菫ちゃんだ!ご、ごめんね、僕行かなくちゃ」
「え、あ‥はい‥」

私は心の中で淋しく思った。

もっと一緒にいれたら、と。



「僕睦月って言うんだ!キミは?」
「わ、私‥?リゼット‥」
「リゼちゃん!猫さんと仲良くね」

ニコッと笑ってあなたは私の手をとった。
そして手を離すと走ってさっきした声の方向へ走っていった。


背中を見るのが切なかった。


「‥っ!」


「‥ありがとう!睦月くん!」

聞こえるくらい大きい声で叫んだ。
すると、あなたは後ろを向いて、私に笑顔で手を振ってくれた。



嬉しかった。

凄く、凄く。


あなたに出会ったこの日。
恋をした。

けれど。



「菫ちゃん、えへへー」
「もー‥どこ行ったか心配だったんだからね」
「本当!?心配してくれたの!?」
「‥してない‥」
「え?だって今言ってた‥んんっ」
「これ以上喋ったら一緒に歩かないわよ‥?」
「んーんー!」
「よし」

「ぷはぁっ!いきなり口に手やるから何かと思ったよー」
「だまらっしゃい、行くわよ」
「‥手繋いでいいの‥?」
「早くしないと先行くよ?」
「えへへー菫ちゃん大好き!!」



そんな声が聞こえた。
辛かった。
あなたには大好きな人がいた。




淋しい。
淋しい。
心がカラッポになる。




「あれ‥」


目から、涙がポツポツ落ちてきた。




あなたはもう。
いない。

私の前に。


あの顔、声、全部。

「私のものにならない‥」







草のうえに寝転んで唄を歌う。
涙を零して私は歌う。

この想いは伝わらない。
伝えられない。

あなたが好きです。



ドキドキが止まらない。

涙も。


「出会わない方が‥よかったの‥?」


あなたの顔、声を思い出す。

初めて出会って。
あなたに恋をして。



終わった。



あなたが好きです。
ずっとずっと。



これは。

誰にも伝えられない恋‥

Bis子の悲恋モノに続いて、今度はリゼット悲恋モノです(´・ω・`)
リゼ睦も好きなんですが!前回睦スミ書いたばっかりだったので、どうしようと思い。
結局こうなったとかいうそんななんですが。
学校にいく前にもくもくと携帯で打っていました。
こうゆう想いを書くのが好きです。

2004/11/26