あなたは待っててくれますか?

この仕事が終わったら、真っ先にあなたに会いに行きますから。


大好きなあなたに会いに。

聖なる夜に

「‥最近ツララ学校こないね」
と、そう呟いたのはBis子だった。
学校の帰り道、ハヤトとBis子は二人で歩いていた。
「‥アイツもあれが仕事だからな‥今大変なんだよ‥」
ハヤトは言う。淋しそうに顔をうつむかせて言う。

12月、寒い日が続く冬のこと。
ツララはサンタの仕事で最近こっちに戻ってこない。
忙しいのくらいはわかっていた。わかっているのに。




「‥っ!やだ!もーやだ!!ハヤトに会いたいのに‥」
「ダメだよ、ツララ。そんなんじゃいつまでたってもプレゼントの仕分け終わらないよ」
「だって‥もう何日もたつのに‥ハヤトぉ‥」
仕事中のツララは毎日毎日、こんな愚痴を一緒にいたデイヴに言っていた。
ハヤトに会いたいのに会えない。
どうして自分はサンタなんかに生まれたの。
こんな仕事なければ今だってずっとハヤトと一緒にいたはずなのに。

「‥ツララはハヤトにもっともっと悲しい顔させたいの?」
「は、なんで?させたくないに決まってるじゃない‥どうして‥?」

「今仕事放棄して逃げたらハヤトはツララのこと嫌いになっちゃうよ」


それを聞いてツララは下を向いて言った。
「そんなの‥分かってるよ‥」

涙目になる。
そんなの分かっていたもの。
逃げたってハヤトは怒るだけなんだって。
分かってるけど。





「会いたい‥」





ハヤトもツララも、同じ想いでいた。





「何を頑張ればいいのかな、俺は‥」
「何をって?」
「今のツララのために俺は何をしたらいいんだろ‥」
ハヤトはBis子に聞いた。するとBis子は優しく言葉をかけた。

「毎日いつも通りにさ、過ごしてみなよ」
「‥?」
「悲しい顔するのはいつも通りじゃないっしょ?明るい顔してればツララにも届くはずよ」
Bis子はニコッと笑ってハヤトに言った。
「‥そう‥かな‥」
「あとは戻ってきたときに自分でツララにしてあげられること全部してあげなよ、ね?」
「‥うん」

ハヤトは空を見上げた。
ツララ、俺待ってるから。
だから。

ツララも泣かないでな‥





「‥もームリ‥」
「そんなこと言わないでよー‥ツララぁー‥」
やる気をなくしてツララはバタッと倒れた。
目をつむってハヤトを考える。
今何をしてるんだろ‥なんて想いを寄せる。

「‥離れ離れなんかじゃないよ‥?」
デイヴは突然言った。
「な、何よ‥」
ツララは不思議そうに顔をしかめてデイヴを見た。

「想いが繋がってるなら、頑張れるはずだよ。だって、ハヤトは待ってるはずだもん」

デイヴは笑顔で言った。

「‥待っててくれてるかな‥」


ねえ、私が頑張ればハヤトはいっぱい褒めてくれる?
いっぱい頭もなでてくれる?



「‥うん、私頑張る‥」


泣かない。
泣くもんか。

あなたが待ってるって信じてるから。

私は頑張るよ。








12月もあと少し。
この日、今年初めての雪が降り始めた。


街には綺麗に光るクリスマスツリー。
人々は賑わって楽しんでいる。

「もうイヴだもんなー‥早いもんだな、一年も」
「‥ですね」
ハヤトはイヴのこの日、リュータと一緒に街に来ていた。

「男同士でイヴっつのもあれだけどなー、まぁ可愛い後輩のためだ!」
「ありがとうございます、リュータ先輩‥」
「ツララちゃん、今日の夜には戻ってくるんだろ?」
「仕事が終わったらすぐ‥って言ってたからきっと‥真夜中かもしれないけれど‥」

ツララはプレゼントを配る仕事がある。だから何時になるか分からない。
もしかしたら明日になるかもしれない。でも、

「プレゼント、早く渡したいもんな」
「‥はい」

さっきリュータ先輩と一緒にツララにあげるプレゼントを買ってきた。
受け取ってもらえたらいいけれど‥。

「喜んで‥くれますかね‥?」
「もちろんだろ!喜ぶって!好きな奴からもらえたら嬉しいじゃん?」
「‥はい‥」



なぁツララ、
俺、ずっと待ってるよ。

片時も離れないくらい想ってるよ。

早く、会いたい。
ツララ‥







夜、雪は積もりつもって白く輝く街が綺麗に化粧されていた。
子供たちは寝ている頃、皆サンタのことを待ってた。



「2時‥か‥」

ハヤトは空を見上げながら言う。
寒い中、ずっとずっと公園のベンチでツララの帰りを待っていた。

待つしかできないけれど、ずっときみを待ってる。







「そーーれっ!!」
パーッと空で広げたプレゼントの山はそれぞれの家に配られた。

「ツ、ツララ乱暴すぎない‥??」
後ろで一緒にプレゼントを配っていたデイヴが心配しながら言った。
「大丈夫よ、だってこのあとの仕事はデイヴの役目じゃない」
「え、何それ!?いつ決まったの!?」
「いーま!ほら、ちゃんとプレゼントいったか確認しなくちゃ」
「っもー‥」
「私は‥今から用意しなくちゃだから‥」
「うん、分かってるよ、ハヤト待ってるもんね、まかせて!」
「‥ありがとう」

ツララは笑顔で言う。

ハヤトが待ってるの。
きっと私を待っていてくれてるの。

お仕事が終わったらすぐに会いに行きますから。

「待っててね‥ハヤト‥」


大好きなあなたに。







もうすぐ朝になる。
空が暗闇から光りへと変わる。








「‥来ないな‥」

ハヤトは少し体を伸ばしながら言う。



その時だった。










「トー‥」



「‥?今なんかツララの声‥?」




「ハヤトーーーーー!!!!!」



ドンッ!!



「っ痛ー‥」
ハヤトはその場から倒れこんでしまった。
そしてその目の前には。




「えへへへへー!!ただいまハヤト!!」

空からおりてきた、彼女がいた。







「遅くなっちゃってごめんね‥」
「ううん、仕事だもん、大丈夫」
そう言ったハヤトを見てホッとした反面少しツララはしゅんとした。

大丈夫って言ってもらえてよかった‥けれど‥
やっぱり私‥


と、少し悲しそうな顔をしたツララにハヤトはおでこにコツンと自分のおでこをつけた。

「わ、なになに!?」

「‥おかえり、ツララ」
にっこり笑ってハヤトは言う。
それにつられてツララ笑う。




「ただいま‥」

そう言ってツララはハヤトにギュっと抱き付いた。







二人で朝を迎える。
日差しが眩しくて、光っていて。
そんな時、ハヤトはツララの左手をグイッと自分の方に持ってきた。

「わ、な、なに!?」
スッと指に何かが当たる。


「メリークリスマス、ツララ」



左手の薬指に見えたのは朝の日差しに照らされて光り輝く指輪だった。

「ハ‥ハヤトぉ!!」
ツララはハヤトを思いきりギュッと抱き締めた。
ありがとう、ありがとうと、たくさんの気持ちを言いながら。







あなたに会えて本当によかった。



大好き。







「サイズ‥ぶかぶか‥ハヤトらしいや、えへへ‥」
「ご、ごめんな、全然知らなかったしさ‥」
「いいの、嬉しいもん!」






待っててくれたあなたがいました。
私を想ってくれるあなたがいました。




「ハヤト‥」
「うん?」



「大好きよ」






あなたと過ごすこれからも。幸せであるように。



メリークリスマス。。

クリスマスな感じで、ハヤツラ小説です。
途中でリュータがツララのこというとき何て呼ぶだろうとか悩んだすえに、ツララちゃん。
言わなそうですか・・・(´・ω・`)
とかそんなで、メリークリスマース!

2004/12/09