雨の日に、キミ。

あの"お気に入り"の洋服は、ずっとずっとクローゼットの中だった。
いつかその日が来るのを待っていた。

いつか"キミ"に会えるのを待っていた。


「お母さーん、いつになったら雨になるのー?」
「前から言ったでしょ、当分は雨にならないわよ。」
「やだぁ、私あのフード着たいのにぃ!!雨がいいよぉー・・」
ずっとしまっていた"お気に入り"は、買い物のときに一目惚れした"ネコ耳フード"だった。
お母さんにねだって、やっと買ってもらったのに、買ってからまだ一度も雨が降っていない。

「かほちゃん、天気いいんだから、外に散歩でも行かない?」
「雨じゃないから外出たくないもん・・。」

もう何日も立ったのに雨が降らない。
"キミ"を着てあげられない。
ただそれだけで、淋しくて、切なくて、外に出たくなかった。

「・・ずっとこのまま着れないなんて・・絶対イヤだからね・・」
窓の外を見ながら私は呟いた。
ちょっぴり涙が出そうだった。


ポツポツ、、、


窓にイキナリ、一粒、ニ粒と何かがついた。
「あれ・・これ・・」
窓を開けて空を見た。顔にポツポツと何かが当たった。
「・・雨だ!!」

開いた窓をそのままにし、私は"キミ"が待つ部屋に急いだ。

"キミ"という"お気に入り"をとりに。


ガタンッ

「さ、出番だよ。」

クローゼットを開け、"キミ"をとりだす。
そして、にっこり笑って"キミ"にほほえんだ。

やっと"キミ"と歩めるね。


「お母さーん!!行ってくるねー!!」

私は家を飛び出した。
ポツポツ降ってきた雨の下を、傘と長靴とネコ耳フードと一緒に走り出した。
行き先は決まってないけど、今、私は凄く幸せだよ。


ネコ耳フード、キミと一緒だから。

授業でショートショートの物語を提出ということで書きました。
前から日記絵でちまちま描いてたネコ耳フード娘なのですが、小説で登場です。
やっと名前も決まりましたかほちゃん(*´ω`)
最後漫画にしたらコマは横長くて後ろ姿で走り去るのを描きたいなぁとか超妄想。
書いてみたいって前から思ってたので、まとめられてよかったです。

2004/05/06