私と雨とキミ。

学校に行く途中の道だった。その時に愛は捨て猫を見つけた。
『あ・・・猫・・・』 黒くて手並もそろっているその猫は、ダンボールの中に独りぼっちだった。
『昨日まではいなかったのに・・』 きっと今日の朝か、昨日の夜に誰かが捨てたのだろう、
ダンボールには"拾って下さい。"の文字が書かれていた。
『学校始まるし・・・また終わってから来るね』 愛は心の中でそう呟いて、その猫の頭をなでた。
猫は「にゃあ」と鳴いて、学校に向かって走る愛をずっと見ていた。

学校に着き、愛は自分の席に座った。
友達におはようと挨拶をしながら、自分の席で授業の準備をしていた。
すると、その時、愛の横から一人の男子の声がした。
「ちっス!おっはよー!」 愛の横の席に座っている青木将也だった。
「お、おは・・よう・・」 愛は控え目に挨拶した。愛は将也が苦手だった。
自分と違い、明るくてクラスをまとめるリーダー的存在の将也のその雰囲気が。
そんなこと全く知らない将也は普通な顔でこう言った。
「愛ちゃんさーもっと明るくいこうよー?ねー?」
愛はそう言われて少し途惑ったが、「あ・・うん・・」とビクつかせながらそう言った。
自分はそんな明るいタイプでもないし、イキナリそんなこと言われても、ただ、困るだけだった。

授業も始まり、愛は朝見たあの捨て猫のことをずっと考えていた。
あの子はお腹をすかせていないだろう、のどがかわいていないだろうか、と。
ただただ、あの捨て猫が心配で仕方なかった。
けれど途中で学校の抜け出すわけにも行かず、愛は考える事しかできなかった。
そんなことを一日中ずっと考えて、時間は早くも過ぎていった。
『帰りに・・家に連れて帰ろう・・!』 今はもう6時間目、すぐ帰って連れて帰ろう、
愛はそうやって決意した。
と、ふと窓に目を向けた。ポツポツポツ。少しずつ雨が降ってきた。
「うっわー!!雨じゃん!!」 そう言ったのは隣りの席の将也だった。
「先生ー!雨降ってきたし、もう授業だるいよ、やめよーー」
だるそうに将也は先生に向かって言った。
「バカ言うんじゃないよ、雨が降っ・・」 キーンコーン・・
「よっしゃ!!終わった!!きりーつ!れーい!」
「・・ったく」 先生は呆れてまたなーと言って教室を出ていった。
愛はそれをただ呆然と眺めていた。
愛はそんな将也と先生のやりとよりも、やはりあの猫を気にしていた。

・・雨が降ってきたんじゃ、あの子風邪引いちゃう・・。
そんな心配ばかり、愛はしていた。

HRが始まり、担任の先生が話をする。
愛はその間もずっと猫を考え、窓の外を見ていた。将也はそんな愛を横で見ていた。
そしてHRも終わり、挨拶をしたと同時に、愛は帰ろうと急いだ。すると、
「あ、氏家、ちょっと待ちなさい」
愛はイキナリ先生に呼びとめられ、先生のもとに行った。
あの猫はこの雨の中どうなっているだろう、あの猫は・・とずっと考えながら、
先生の話をあまり聞かずに、猫のことばかりに集中していた。
「・・ということで、いいかな。氏家?」
「あ、え、はい」「よし、ありがとう、呼びとめてごめんな、気をつけて帰れよー」
先生の話も終わったらしく、先生は行ってしまった。
愛は時計を見た。HRがが終わってから10分もたっていた。
愛は急いで走った。息を切らして雨の中、朝見た猫のもとへ向かった。


しかし、そこには誰もいなかった。
朝いた猫はいなくて、そこには雨で濡れている空のダンボールの箱しかなかった。
「そんな・・」
愛はダンボールの前で座りこんだ。ダンボールに振れながらこう思った。
飛び出して車にはねられたのだろうか、
それとも他の誰かに拾われて引き取られたのだろうか。
不安と安心とが絡み合い、心配になる愛。すると、後ろから誰かの声がした。

「愛ちゃん?」
バッと愛は振り返った。するとそこにはクラスの男子、将也が立っていた。
「にゃあ!」 将也のYシャツの中から「にゃあ」と明るい声も聞こえた。
「猫ちゃん!!」 愛は喜んだ。あの捨て猫だった。
「ほら、雨降っててコイツぬれちゃうじゃん、だから俺帰りスグここ来てさー」
「・・よかったぁ・・」 愛は顔がほころんだ。自然と笑みになる。
何を思ったか将也はイキナリ、「その顔!!すっげぇイイよ!!」と言った。愛はビクッとした。
「愛ちゃん、俺といるとき、楽しくなさそうなんだもん、だからその顔、凄いよかった!」

「笑った顔のが可愛いよ」

将也はニコっと笑って愛にそう言った。
愛はドキッとした。胸がドキドキした。その将也の一言と、その顔に。
将也のYシャツの中で猫はまた「にゃあ」と鳴いて、見つめ合う二人をひっそり眺めていた。

愛は真っ赤になってこう思った。
『笑顔でいたいけど、今度はドキドキしすぎちゃって明るくなれないかも・・・』
その雨の中、愛は下を向いて恥かしがって考えていた。
将也は何で愛がそんな風になってるのかわからないまま、笑顔で愛を見ていた。

この日、この雨の中。これが、恋の始まり。

マンガの授業で提出したプロットです。長いのでこれを省略して提出しました。
恋愛系なのでとても恥ずかしいですが載せました、、!
テーマが雨ということで!前の小説とちょっとかぶってますが。。。
のちに漫画にして、学校で提出しました。
初めてのマンガの授業で出した作品なので思い出深いです。

2004/05/29