J. −ジャック−

「お母さん、ちょっと出掛けて来るねー」
そう言って、"りゅい"は玄関を出ようとした。すると母親は言った。
「あ、ちょっと待って、りゅい。これ前にアンタの部屋掃除したら出てきたんだけど・・」
と、母親は汚らしい猫の人形を持って聞いた。
「いらないいらない、汚いし何が出てくるかわかんないし、捨てていいよ。」
そして、りゅいはそのまま出掛けて行った。
母親はその人形を抱えていた、しかし、「あら・・?」
いつのまにか抱えていた人形はいなくなっていた・・――

りゅいは元気に歩いて外にお出掛けしに行った。
その途中だった、不思議な光景を見た。
「は・・!?」
前から猫の人形らしきものが走ってきていた。それは犬に追いかけられていた。
「な・・何あれ・・」
りゅいの横をその人形と犬が通って行った。りゅいはそれを眺めていた。
と、よくその人形を見ると、後ろに丸い穴があいているのが見えた。
「・・何だろ、あの穴・・ま、いっか。行こう。」りゅいはそのまま、また先を歩いて行った。

その時、足元で何か光るモノを見つけた。
りゅいはそれを拾って見た。それは、何かのネジだった。
「何のネジだろ・・」と、不思議に思っていると、後ろから変な声が聞こえた。
「たーすーけーてー!!」
ハッと、りゅいが後ろを向くと、さっきの猫の人形がまたりゅいの方向に走ってきた。
その速さは、さっきと比べると凄く遅くなっていて、
犬にすでにしっぽを噛まれているんじゃないかというところまできていた。

その時、りゅいはその猫の人形を不思議と助けてあげたいと思った。
自分には全然関係がないことなのに、助けないといけない気がした。
そしてりゅいは近づいて行って、犬を追っ払った。
「大丈夫!?」と、りゅいが聞くと、猫の人形は「ありがとう、りゅいちゃん」と言った。
「・・え?」どうして私の名前を知ってるの・・と、りゅいが不思議に思っていると、
猫は目をゆっくり閉じて、動かなくなってしまった。

「あれ・・ねぇ、ねぇ・・?」 しんっ・・と、静かになる。
「ちょっとどうしたの、動いてよ」 静かなまま、その人形は動かなかった。
りゅいはそのまま置いていく気になれず、どうしようか考えた、すると。
そういえば、と、あの穴を思い出した。そして、拾ったネジを取り出した。
ネジを穴に差し込んでみると、ピッタリあって、それをりゅいはまわしてみた。

すると、綺麗な音楽が流れた。
「こ、この曲・・」聞き覚えのある曲・・。
その音楽と一緒に、りゅいの頭に過去の自分が流れてきた。
過去の自分と一緒にいる人形は・・猫のオルゴール人形だった。
そうだ、この猫の人形の名前は・・

「・・ジャック・・」
するとその猫は目を覚ました。そしてりゅいの方を向いて行った。
「・・やっと気付いてくれた。最後に、ちゃんとりゅいちゃんとお話がしたかったんだよ」
「最後・・?」
「もうすぐ捨てられちゃうから、ちゃんと、挨拶がしたかったんだ」
「……」 りゅいは思い出した、お母さんが持っていた人形、あれは、たしか・・。
「ありがとう、りゅいちゃん」
そう言うと、ジャックは突然光りはじめて、小さくなっていった。
小さくなったジャックは、もとの大きさの人形になった。
「ジャック・・」
ものと大きさに戻ったジャックは、朝、母親が持っていた、汚ない人形だった。

そのまま、りゅいはジャックを持って帰って家に帰った。
「あれ、アンタそれ・・」と、母親が言う。
するとりゅいは、
「・・あたし、大事にする・・綺麗にして、また、この曲を聴くの。」
りゅいはジャックを抱きかかえて、ネジをまわして言った。

曲が流れる。

この曲は、あたしの想い出だ・・――

マンガWでの8Pマンガのプロットです。
テーマは「穴」で、穴を題材に書きました。
先生の説明聞いてるうちにネタ思いついたのでさっさとメモってプロット書いてみたり。
プロットの直しもなく、すんなり先生にオッケーもらえたのでよかったです(*´▽`*)
感動モノが書きたいんですが、なかなかうまくいきませんね。
ちなみにりゅいちゃんは高校生です。
大事にしてたものっていつしか忘れてちゃうんだよね。さびしいな。。

2005/05/17